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『home』展リポート @graf media gm
挑戦状、届く!?

 記者会見の席上で「今回の展示で作られたのはどこまでなのですか?」との質問が飛び出してました。 会場であるgraf media gmを初めて訪れる方は、ビルの中に家を建てている「こういう趣向」の場所なのかと思われるかも知れません。つまりは、とても仮設というか、2ヶ月ほどの展示のためのものとは思えないほど、それはそれはしっかりとした造りなのです。
『home』展は2003年の『S.M.L』、2004年『Shallow Puddles』に続きgraf media gmで開催する奈良美智さんの3回目の展覧会で、国内外様々な場所で小屋をバンバン建てまくっている(しかもドンドン凄いことになって来ている!)grafの本拠地gmでの、意外なことにYOSHITOMO NARA+graf名義としての展覧会は初!ということになります。
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祝!初個展!!(奈良さん手書き『home』展解説図の上部。右端に「初個展!」の文字。)

 展覧会名『home』は命名:豊嶋秀樹(graf)さんで、homeというのは家族がそこに住んでないとhomeとは呼べず、一人暮らしや空き家だとhouseになるらしいのです。home sweet homeという訳か、会場内にはとってもリラックスした雰囲気が漂っています。
 「小屋マニアにはたまらない数々の仕掛けが隠されている!」という彼らからの挑戦状?を胸に、今日もまた展示を隅々まできょろきょろ見回してしまうのです。
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2005年12月17日、grafでの記者発表の様子。向かって左が奈良さん、右が豊嶋さん


会場入口に立ってみると

 昔の木造校舎のような下見板張りの白い外壁に覆われた、色々なところの展示で見覚えのある様々な廃材を用い造られたこのお家(home)は、日曜大工が趣味のお父さんが週末ごとにお手入れしながら、家族との想い出の数々をペンキと共に塗り重ねたかのように、全てをあったかく包み込んでいる雰囲気です。
 会場の入口には、「本物の」扉がしっかりついています。開閉も出入りもできます!よくよく考えるとこれまでの奈良+grafの小屋達には開かずとか開けちゃいけずの扉は何度か取り付けられてはいましたが、初の観客開閉可扉です。扉には真鍮製のドアノブやドアポストそして住所表示の「3」の数字が…。これにはgmでの3回目の奈良さんとの展覧会という意味と、grafの社名である「decorative mode no.3」という意味が込められているとのことでした。

 お家の前に設置してある白いポストへ切手を貼って出すと、home展のスタンプを押した手紙が郵送されるという仕掛けに。この場所に立ち寄ることによって、大切な人のことを思い出すきっかけになるという、今回の展示にぴったりな企画です。
そして展覧会のオープンがちょうどクリスマス前ということで、初日の朝にはクリスマスツリーとプレゼントがドアの前に置かれていました。かわいい…。
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『home』展会場入口付近。向かって右手前にポスト。


リビングルームに入ってみると

 入口のドアを開けると、目の前に壁を横浜トリエンナーレ2005(ヨコトリ)の展示で見覚えのある薄いペパーミントグリーン(ナラブルー?)に塗られたリビングルームが登場。部屋の中央には天板が八角形の白いテーブルを、小さな白い椅子が8脚取り囲んでいます。壁面一面に作られた沢山の小さな棚には、来場者が持ち込んだ人形等(奈良さん所蔵のぬいぐるみも参加)が好きな場所に展示できるようになってます。

 展示の雰囲気に見合うもの、というイメージで持参された人形やぬいぐるみが殆どなのですが、時間を追うごとに、誰もが知っているキャラクターの濃ゆーいものや、募集規定の30センチ以内を優に越える巨大なぬいぐるみなどなどが棚を占領しはじめました。あらら…ちょっと路線から外れている…と思いつつ、どこかその人形に宿る、プレゼントする側、される側の相手を思う気持ちが何とも憎めない、お土産でもらっちゃった木彫りのクマや提灯が占拠している実家のリビングに居るような雰囲気なのです。
 持ち込んだ人たちとの様々な思い出がしみ込んだ人形を見ていると、どんなささやかなものにでも、そのものの中に「幸せ」があって、周りの人々を幸せにする力が宿っているのだと、そして全てのものが何か特別な目的のためにこの世におくられた、かけがえのないものなのだと…。自分が持ち込んだぬいぐるみなのに、この場で改めて向き合うと、プレゼントしてくれた、今は会うことの無くなった友だちのことをしみじみ思い出し、胸がジーンとしてしまいました。そんな人形達と訪問者である私達を、9割方完成しているという(完成させるのがもったいない!AtoZまでとっておく:奈良談)この家の主である大作の新作ペインティング《Welcome Home》がどどーんと迎え入れてくれるのです。
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展覧会初日撮影/ずいぶん増えたんだろうな〜、ぬいぐるみ。


 窓の外からは、ヨコトリの展示の際に沢山登場していたコンテナ犬達がガラス越に覗いています。奈良+grafが2004年に横浜美術館で発表した《カブール・ノート》では、小屋の外側から、奈良さんがカブールの街の様子を撮影したスライドの映写を窓ガラス越しに「覗き見る」という鑑賞スタイルで、アフガニスタンに住む人々との距離感が表現されていました。その窓ガラスの内側に入り、外側から奈良さんの犬達に覗き見られるという、何だか今までと逆の「立場」になれた気分です。
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マッチ売りの少女風わんこ達…


ドローイングルームを覗いてみると

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ドローイングルームのデスク上


 奥に進むと、右手にドローイングルームが登場します。「ドローイングルーム」とは、奈良さんのアトリエの雰囲気を再現(実際設営中はここで制作)した、作品が生まれる環境そのものが展示されている部屋のことです。
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雨漏りがするので豊嶋工務店の若旦那に直してもらう(嘘) 



 そこにはドローイング以外にも、デスクや椅子、画材、灰皿、お気に入りのおもちゃなど、奈良さんが持ち込んだ様々なものがそこかしこに並べられています。この度のご自慢の一品かな?[GRAF ZEPPELIN]と浮き文字もまぶしい、grafに展示するのに何てお誂えな!といった銀色の飛行船二艇と、

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アップにしてみました!どこに売っていたのですか?


大きなサングラスをしたミュージシャン、ニルヴァーナのカート・コバーン(Kurt Cobain)のポートレート、そして同じサングラスでキメてる女の子のドローイング数点が壁に登場、
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Kurt…


 
 他にも新作が沢山…。オープン前日に開催されたイベント「マッコリナイト ケンチャナヨ!」では、奥の方が賑やかだなーと思ったら、奈良さんがライブペインティングの真っ最中!
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実際は黒山の人だかりで、ちょっとしか見えませんでした…こんな感じだったのですね。 


 壁に直接ドローイングし始めていました。事前に壁にピンナップされていた山をモチーフにした作品から、DIAMONDと描かれたパッチリお目々の山並みがピョンピョン外へ伸びていっています。山の上には三角屋根の家も描かれています。オープニングから初日までは、米子市美術館での展覧会の関連イベント「YONAGO NIGHT」でかけられた曲の数々が流れていました!泣。
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出来上がりはこんな感じですー!



プレイルームとは
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右奥がプレイルーム入口。八角形です!オレンジです!

 ドローイングルームの向かい側には、壁がオレンジに塗られた入口も床面も天井も(そりゃそうか…)八角形のプレイルームが登場。ボーっとしていると激突必至、ここの入口の低さはN.Yで開催された個展での出品作《Chelsea white house》のリスペクトかな?
部屋の中には、30センチ角の立方体の3×3のサイコロパズルと奈良さんデザインのクッション(製作:たかちゃん/リュクサンブル公園)が5つ、絨毯敷きのお部屋に楽しげに転がっています。サイコロの6面それぞれには、9つ組み合わせると1,2,3とトンガリ帽子にかいてあるマラカスを持った3人子ども達の絵が完成するように、9分の1つづ描かれています。
 このパスル、けっこう難しい(失礼)らしく、しかも、部屋を覗くたびに何やら面白い形に積み上げられていて、入れ替わり立ち替わり熱中して取り組んでいる姿が展開していました。順番が回らないうちに帰路につかねばならず…、うーん心残り。
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よもやこんなことになっているとは! 

(特別ゲストの間)かな…?
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青森からやってきました。《あおもり犬》(原型)です。

 テラス奥の部屋には型を取り終えたあとでちょっとくたびれた感の漂う、もとい大仕事を終えた後で男?っぷりをあげた(青森での記者発表の時はきれいな白だったのに、今回見たらグレーのまだら模様に…)来夏開館の青森県立美術館に設置され話題となった8.5メートル高の《あおもり犬》の原型(約1メートル高)が特別に展示されています。工房での微調整中、grafの先輩わんこオヤカタとクロチャンがこの3匹目の新参犬に興味津々、目が釘付け!だったそう。
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何やら心配そうに見つめている先輩犬たち 


 その向かいには《HOME》という作品が…、しかし、こちらよくよく見るといつもの作品と雰囲気が違うし、「H.Chaguin」なるサインが?これはシャガールとゴーギャンの名前をくっつけたものらしく、正真正銘奈良さんの作品です。杉戸洋さんはP. Chaguinと語っているとかいないとか…。画面をよくよく見ると、小さな三角屋根の家が描かれています。通常あまり見ることのできない彫刻原型や別の名前でサインがしてある作品が展示されているこの部屋もまた『home』展らしい、プライベートな空間に招き入れられた雰囲気です。
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作品の前で必死にこの作家名の記憶の糸を辿る人続出…



 テラスにはgrafのフラッシュパターンのプランクトンチェア&テーブルが2セット設置され、実際そこではAtoZ会場である弘前の名産、リンゴをイメージしたhome展特別メニューをはじめcafe/barで注文したものが飲食できるようになっています。記者会見の時に緑がバックにある方が画的に爽やかなのでは?と運び込んだ植木鉢もすっかり馴染んで、gmのホントの窓から差し込む陽射しがさわやかな居心地の良い空間です。
 向かって左側奥の柵には“private”と奈良さんが赤いクレヨンでさらさらっと書いていて、向こう側にはコンテナ犬たちの後ろ姿も覗けます。そしてよくよく見てみると(某所に)待ってました!小屋マニア垂涎の小さい小屋型の覗き穴が!その中には空中浮遊ピルグリムが!(詳しくは内緒)

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この小屋型の穴、ホント小さいのです!


夢の扉

 以前豊嶋さんが『S.M.L』から始まったこのプロジェクトというのは、展覧会開催地それぞれの場所で集めた材料と仲間達とで「自分たちの場所」を作ってきたものなんだと説明されてました。
 でもその場所は彼らの為だけの空間ではなく「誰のものにでもなる、“僕たちの場所”」であるのだと…。ちょっと謎掛けのような説明ですが、この展覧会を訪れた人が懐かしい気分になる、みんなに開かれているんだけど、それぞれに親密な雰囲気を感じるのは、きっと奈良さんの作品や自宅から持ち込んだ沢山のお気に入りのモノ達を包み込む、様々な場の記憶がしみ込んだ沢山の廃材や人形やぬいぐるみ、そして何よりも参加した全ての人が共有する「僕たちの場所」を作るんだという夢が結実して“home”が出来上がっていて、その思いが場を包み込む空気として伝わってくるからなのでしょう。
 ドローイングルームにある“AtoZ”のロゴが記された、今はまだ開かないあの扉の向こう側は、奈良さんの作品と展覧会という“旅”で集めた廃材で各地の仲間達と作った小屋の数々、労働力と想像力etc…全ての力を一つの夢のもとに結集して作り上げる、見たことが無い「私たちの場所」へ、夏の弘前の煉瓦倉庫へと繋がっている夢の扉なのかもしれません。(文=今香)
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扉の向こうには…


★「home」展はgraf media gmにて
12月18日〜2月12日まで開催
graf HPはこちら

A to Zとは?

All Photo Copyright Masako Nagano, Kaoru Kon & A to Z 2006 All rights reserved.
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by AtoZ_reporter | 2006-01-21 13:49 | ★各地の展覧会リポート
★コーナー紹介:A to Zとは?
今夏、弘前で開催される奈良美智+graf「A to Z」展は、
青森県弘前市にある煉瓦倉庫の中にAからZまでの想像的な小屋を建て、
アーティスト、奈良美智の世界をひとつの街並みとして結晶化させようというプロジェクトです。
小屋のひとつひとつには、奈良美智の作品や彼の好む音楽、奈良とゆかりのあるアーティスト達の作品などが飾られ、観客が参加できる遊び場的要素も加わります。
訪れる人ひとりひとりが、忘れていた何かを取り戻す記憶の街並み、それがA to Zの世界です。

使い古された廃材で風情ある小屋をつくり出すのが
奈良の良きパートナーであるgrafの豊嶋秀樹をはじめとする面々です。
彼らはここ数年、世界各地の展覧会で共にたくさんの小屋アートを生み出してきました。
それらは皆、この夏のA to Z展に集結し、新たな街並みの中に再登場します。

このブログでは、夢の街づくりに向けてつぎつぎと完成していく新しい小屋の様子や
A to Zにまつわる出来事を、
A to Zリポーター達がさまざまな切り口から報告していきます。

そう、A to Zプロジェクトは、すでにもう始まっているのです!

*A to Zプロジェクトの詳細については公式HPをご覧下さい。
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by AtoZ_reporter | 2006-01-20 17:32 | ★A to Zとは?




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