2006年 02月 16日 ( 2 )
「束の間美術館ソイサバーイ」展報告2
1からのつづきです。
「束の間美術館ソイサバーイ」展は、シラパコーン大学ギャラリー以外に3つの展示会場があり、それぞれの場所を探してバンコクの街を彷徨うのも、大きな楽しみのひとつでした。
f0041819_1554156.jpg
このチラシの裏が地図になっています。スタンプラリーもありました。


民家のようなくつろぎスペース、Rajata会場へ

シラパコーン大学からはそう遠くないラジャタ会場は、民家の建ち並ぶエリアにありました。ワークショップや展示などで使われるアートスペースだそうで、いい感じに使い込まれた木造建て三棟から構成されています。

f0041819_14443345.jpg
中央の水色に塗られた棟がメインの展示会場。人を安心させる趣があります。


窓から気持ちのいい風が入る(蚊もいっぱい入る!)空間に、作品が点在し、ここにミニミニ奈良美智+graf小屋もありました。
自宅にいるようにくつろいだ空気が流れていて、そこに居るだけで、タイのゆっくりした時間の中に引き込まれてしまいます。美術館とはまた違う、アートと日常が自然に解け合う希有な場所。こんなところが近くにあれば、毎日通ってしまうのに!ていうか、住みたいぞ。

f0041819_14454095.jpg
スワン・ライマネーさんは、タイ式マッサージを指導。観客同士で治療しあいます。

f0041819_14461573.jpg
細木由範さんの樹の幹の彫刻。キノコのように生えてきた?


夜のアートスペース、Pla Dib会場へ

都心のサイアムあたりまでいったん出て、電車に乗ってアリー駅へ。路地裏の熱気がうずまく町中から一転、豪邸の建ち並ぶハイソなエリアをてくてく歩き、ナイトスポットのプラ・ディブへ。気負わない家具や空間のデザインがセンスよく、タイのgrafのような(?)落ち着ける場所です。日中は開いていませんが、展示を特別に見せていただきました。一階はライブ会場とバーで、その二階が展示会場になっていました。
f0041819_14494353.jpg
プラ・ディブ会場の外観

f0041819_1449439.jpg
階段ホールに奈良美智さんの「Nightwalker」が展示。中央がSutee Kunavichayanontさん「タイの摩天楼」、右が伊藤利江さんの「flower」。

f0041819_14482619.jpg
左から、イーリー・キシモトさん、Ambient TV.NETさん、Podさんの作品。

f0041819_14502527.jpg
お風呂場を使ったPhilippe Laleuさん、Porntaweesak Rimsakulさんの展示。他の部屋には都築響一さんの秘宝館写真もありました。

f0041819_14522250.jpg
アシスタント・キュレーターのケイトさんが作業中でした


Ruen Nuad会場でマッサージ!

電車のサラディーン駅から、道沿いで野菜や揚げ物、汁物を売る屋台の美味しそうな香りをくぐりぬけ、お洒落なレストランに隣接する、二階建てのマッサージ屋さんへ。
f0041819_1451154.jpg


飾られているのはSutee Kunavichayanontの一点のみ。あれれ?
f0041819_14505247.jpg
西洋人の紳士がムエタイ選手に踏まれて(揉まれて?)います。


でも、せっかくここまで来たのだからと、フット・マッサージを受けていくことにしました。1時間でたった1000円弱。強すぎない適度なマッサージをゆるゆる受けていると、頭が覚醒したりまどろんだり、いつのまにか夢見心地に……旅の疲れも落ちていきます。
タイにおいてはマッサージは宗教的意味合いもあると聞いたことがありますが、ここでマッサージを受けることも、展覧会の意図のひとつだったのかもしれません。さらには、道すがら屋台でご飯を食べたり、暑い街の雑踏で人々の生活を感じることも、展覧会の一部なんじゃないかと思えてきます。すべてがソイサバーイ。街全体が展覧会に見えてきました。
f0041819_1642098.jpg
古い建物をリノベしたマッサージ屋さんの二階は、くつろげるベランダ・スペース。

マッサージ屋さんは、よく見ると民家を改築した雰囲気のある造りで、廃材を上手く利用しているところなど、A to Zの小屋の風情ととてもよく似ていました。
そう思って街を歩くと、バンコクには「A to Zな」建物がいっぱいあります。もとの造りがわからないほど手が加えられたつぎはぎの家や、おんぼろだけど愛嬌のある小屋も、新しい規格品の建物にはない、生活の温もりや人の生きる力に満ちています。
じつは、バンコクに建った奈良+grafの小屋が、あまりにもこの土地に馴染んで見えることが最初は不思議でしたが、その理由が少しだけわかったような気がしました。タイには、A to Zの精神がごく自然な形で、日常の中に息づいているのです。いや、残っているというべきでしょうか。
そしてそれは、以前、弘前の煉瓦倉庫に建つ小屋を見たときに感じた感覚にも近いものでした。

f0041819_14524756.jpg
チャオプラヤ川の船着き場も「A to Z」に見えてくる!


シンハー・ビールで一服しながら、ある人がポロリと言った言葉が印象に残りました。
「A to Zは、奈良さんや豊嶋さんが世界中を旅して見て、感じたことが、小屋という形で表現されているんじゃないかな・・」。
そんな旅の感覚を追体験できたサバーイなバンコク紀行は、いつまでも余韻を残したのでした。
(文・写真=宮村周子)

*「束の間美術館ソイサバーイ」展のHPはこちら
[PR]
by AtoZ_reporter | 2006-02-16 14:56 | ★各地の展覧会リポート
「束の間美術館ソイサバーイ」展報告1
f0041819_14275072.jpg
展覧会プレートはジョナサン・バーンブルックデザイン!


文化遊牧民の澤文也さんがキュレーター

タイのバンコクで、2月11日〜17日までの一週間開催されるグループ展「束の間美術館ソイサバーイ」。奈良美智+grafが参加したこの展覧会は、澤文也さんとgrafの豊嶋秀樹さんの共同キュレーションで実現しました。
澤さんは、大阪にいたかと思えば、次はロンドン、そして台北、インドetc.と、世界各地を旅して回る、神出鬼没の不思議な方です。肩書きは「記録人」とよくされていますが、様々な企画を手がけるほかに、執筆、翻訳、写真家等々、実に多彩な顔をお持ちで、なによりその交友関係の広さは驚くばかり。新しくて面白いことをしている人達を誰よりも早くキャッチし、口コミや展覧会や記事を通じて紹介してくださいます。
そんな澤さんは、じつは奈良さんとgrafとを最初に引き合わせたキイ・パーソンでもあります。2003年にgraf media gmで開催されたグループ展「my room somehow somewhere」に奈良さんが参加したのが事の発端。同展は、気の合う仲間の活動を自室でくつろぐようにして紹介したアットホームな企画で、そのコンセプト自体が、自分達のhomeにこだわる「A to Z」展のスピリットと共鳴しています。そのあたりの経緯は、ソイサバーイ展HPにあるご挨拶文に詳しいです。

f0041819_142904.jpg
澤文也さんと奈良美智さん。じつはトラックの荷台で風に吹かれています。


さて、澤さん今イチオシのタイのアートシーンを紹介する展覧会は、2004年にやはりgraf media gmで「8月のタイ: welcome to soi sabai」という名で開催されました。これがさらに熟成し、日本や世界各国からのアーティストも多数参加して、タイ本国で実現したのが、今回の「束の間美術館ソイサバーイ」です。4会場を使い、29組のアーティストが参加。ソイサバーイとは、「気持ちのいい路地」という意味だそうです。
バンコクにはどんなサイサバーイが待っているのでしょうか?

メイン会場シラパコーン大学ギャラリーでオープニング!

奈良美智+grafの建てた小屋の詳細については、別のリポートをご覧いただくとして、ここでは展覧会の全体をざっくりと報告していきます。

まずは、2月9日の夕方6時から開催された展覧会オープニング。日中は30度を超すバンコクですが、夕方に日が陰ると少しだけ過ごしやすくなります。王宮前広場に隣接したシラパコーン大学のギャラリーへ向かうと、プーケットから運ばれてきた奈良さんの犬「Your Dog in Phuket」を囲み、式典が始まっていました。

f0041819_14293741.jpg
出品作家たちがご挨拶。中央のピンクのTシャツの人が豊嶋さん。


座席で目が留まったのは、手作りの犬を大事そうに抱えた小学生の姿。実は彼らは、展覧会の一環として行われたワークショップに参加した地元の子供達で、学校帰りの時間を使って、奈良さんの犬の絵を見ながら彫刻をつくりました。そして、それぞれの犬の名だけを聞いて、建築学部の学生が廃材で犬小屋を作成。オープンの日にお互いの初披露となったそうです。なんだか心温まるサプライズ・ストーリー!

f0041819_1430390.jpg
花柄制服シャツの子供達は自作の犬を手に。

f0041819_14311928.jpg
彼の犬にはこんな家が待っていました!

f0041819_14303311.jpg
自分の家をもった子犬達。どれもかわいい!


シラパコーン大学はイタリア人彫刻家のシルパが創設した美術大学で、大学の校歌は小節の利いた「サンタ・ルチア」(!)なんだそうです。
オープニングの夜はとにかくたくさんの学生や来場者で大にぎわいでした。
展示に使われたギャラリーは大部屋二室と小部屋二室からなる立派なスペースで、奈良+grafの小屋は右手の奥まった一室を使用。サイズは小ぶりながら、これまでの技の粋とタイの息吹が込められた力作でした。

f0041819_14322156.jpg
日本でも人気のウィスット・ポンニミットさんはエントランスの壁に来場者の似顔絵をライブ・ドローイング。

f0041819_1433550.jpg
子供達に大人気だったAamu Song(Anteeksi)さんの着られるアート。祭事用と日常用と二種類。

f0041819_14333853.jpg
犬は展覧会の隠しテーマ。違う犬種になれる犬用着ぐるみに爆笑。Peng Hung-Chihさん作。

f0041819_1433587.jpg
ポール・デイヴィスさんのドローイング・インスタレーション。

f0041819_14345162.jpg
思わず笑っちゃう、梅佳代さんの写真シリーズ。

f0041819_14351952.jpg
グッピーの水槽やジオラマでコンロを改造。映像と組み合わせた作品。


このほか、米田知子、Mai Hofstad Gunnes、映像ルームではコーネリアス+辻川幸一郎といった皆さんが作品を発表。世界最速のアート展はなんだかユーモラスで身近で、居心地がよくて、いつまでも会場にとどまりたくなりました。(2に続く
(文・写真=宮村周子)

*「束の間美術館ソイサバーイ」展のHPはこちら
>>報告記事2へ
>>小屋倶楽部のバンコク記事へ
[PR]
by AtoZ_reporter | 2006-02-16 14:35 | ★各地の展覧会リポート




Copyright 2006 Yoshitomo Nara + graf All rights reserved.
掲載された記事・写真の無断複写・転載はご遠慮ください。