「束の間美術館ソイサバーイ」展報告2
1からのつづきです。
「束の間美術館ソイサバーイ」展は、シラパコーン大学ギャラリー以外に3つの展示会場があり、それぞれの場所を探してバンコクの街を彷徨うのも、大きな楽しみのひとつでした。
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このチラシの裏が地図になっています。スタンプラリーもありました。


民家のようなくつろぎスペース、Rajata会場へ

シラパコーン大学からはそう遠くないラジャタ会場は、民家の建ち並ぶエリアにありました。ワークショップや展示などで使われるアートスペースだそうで、いい感じに使い込まれた木造建て三棟から構成されています。

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中央の水色に塗られた棟がメインの展示会場。人を安心させる趣があります。


窓から気持ちのいい風が入る(蚊もいっぱい入る!)空間に、作品が点在し、ここにミニミニ奈良美智+graf小屋もありました。
自宅にいるようにくつろいだ空気が流れていて、そこに居るだけで、タイのゆっくりした時間の中に引き込まれてしまいます。美術館とはまた違う、アートと日常が自然に解け合う希有な場所。こんなところが近くにあれば、毎日通ってしまうのに!ていうか、住みたいぞ。

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スワン・ライマネーさんは、タイ式マッサージを指導。観客同士で治療しあいます。

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細木由範さんの樹の幹の彫刻。キノコのように生えてきた?


夜のアートスペース、Pla Dib会場へ

都心のサイアムあたりまでいったん出て、電車に乗ってアリー駅へ。路地裏の熱気がうずまく町中から一転、豪邸の建ち並ぶハイソなエリアをてくてく歩き、ナイトスポットのプラ・ディブへ。気負わない家具や空間のデザインがセンスよく、タイのgrafのような(?)落ち着ける場所です。日中は開いていませんが、展示を特別に見せていただきました。一階はライブ会場とバーで、その二階が展示会場になっていました。
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プラ・ディブ会場の外観

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階段ホールに奈良美智さんの「Nightwalker」が展示。中央がSutee Kunavichayanontさん「タイの摩天楼」、右が伊藤利江さんの「flower」。

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左から、イーリー・キシモトさん、Ambient TV.NETさん、Podさんの作品。

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お風呂場を使ったPhilippe Laleuさん、Porntaweesak Rimsakulさんの展示。他の部屋には都築響一さんの秘宝館写真もありました。

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アシスタント・キュレーターのケイトさんが作業中でした


Ruen Nuad会場でマッサージ!

電車のサラディーン駅から、道沿いで野菜や揚げ物、汁物を売る屋台の美味しそうな香りをくぐりぬけ、お洒落なレストランに隣接する、二階建てのマッサージ屋さんへ。
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飾られているのはSutee Kunavichayanontの一点のみ。あれれ?
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西洋人の紳士がムエタイ選手に踏まれて(揉まれて?)います。


でも、せっかくここまで来たのだからと、フット・マッサージを受けていくことにしました。1時間でたった1000円弱。強すぎない適度なマッサージをゆるゆる受けていると、頭が覚醒したりまどろんだり、いつのまにか夢見心地に……旅の疲れも落ちていきます。
タイにおいてはマッサージは宗教的意味合いもあると聞いたことがありますが、ここでマッサージを受けることも、展覧会の意図のひとつだったのかもしれません。さらには、道すがら屋台でご飯を食べたり、暑い街の雑踏で人々の生活を感じることも、展覧会の一部なんじゃないかと思えてきます。すべてがソイサバーイ。街全体が展覧会に見えてきました。
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古い建物をリノベしたマッサージ屋さんの二階は、くつろげるベランダ・スペース。

マッサージ屋さんは、よく見ると民家を改築した雰囲気のある造りで、廃材を上手く利用しているところなど、A to Zの小屋の風情ととてもよく似ていました。
そう思って街を歩くと、バンコクには「A to Zな」建物がいっぱいあります。もとの造りがわからないほど手が加えられたつぎはぎの家や、おんぼろだけど愛嬌のある小屋も、新しい規格品の建物にはない、生活の温もりや人の生きる力に満ちています。
じつは、バンコクに建った奈良+grafの小屋が、あまりにもこの土地に馴染んで見えることが最初は不思議でしたが、その理由が少しだけわかったような気がしました。タイには、A to Zの精神がごく自然な形で、日常の中に息づいているのです。いや、残っているというべきでしょうか。
そしてそれは、以前、弘前の煉瓦倉庫に建つ小屋を見たときに感じた感覚にも近いものでした。

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チャオプラヤ川の船着き場も「A to Z」に見えてくる!


シンハー・ビールで一服しながら、ある人がポロリと言った言葉が印象に残りました。
「A to Zは、奈良さんや豊嶋さんが世界中を旅して見て、感じたことが、小屋という形で表現されているんじゃないかな・・」。
そんな旅の感覚を追体験できたサバーイなバンコク紀行は、いつまでも余韻を残したのでした。
(文・写真=宮村周子)

*「束の間美術館ソイサバーイ」展のHPはこちら
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by AtoZ_reporter | 2006-02-16 14:56 | ★各地の展覧会リポート


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